浪人生活 2

結局私は3年、「来年こそは」を繰り返した。
その3年目も終わろうとしていた1月下旬のある日、世間が21世紀の幕開けに湧く中、私は崖っぷちに立っていた。
その頃になってようやく、現状のヤバさに青ざめだした。
親に「受験はやめる。とりあえずバイトする」と切り出した。
さすがの私も、「もうあと1年」とは言えなかった。
とりあえずアルバイト情報誌をめくり、バイトくらいはする…という体裁を見せたのだった。

しかし私はこの後に及んでもまだ、受験をあきらめているつもりはなかった。
「バイトしながら受験勉強をしよう!」と目論んでいた。
受験をあきらめるなんて、ぜったいぜったい考えられなかった。
だから1日8時間とかは無理。選んだのはコンビニのバイトだった。

もちろんその年も勉強などせず、ほぼ初めての労働で毎日がいっぱいいっぱいになり、とうとう勉強机の椅子に座ることすらしなくなった。
手付かずの参考書の山には埃が積もっていった。

そんな風にして小遣い稼ぎ程度のバイト生活をダラダラ2年続け、とうとうバイトも嫌になり(バイトや仕事に関してのことは、また別の項目で)、働くこともせず、勉強もせずの、いよいよ人としてサイテーな生活に突入した。

バイト2年目の年、ちょうど店頭に並ぶパソコンがWindows XPばかりになった頃、家電製品好きの父がノートパソコンを買ってきた。その中にインターネットが2週間無料で試せるプログラムが入っていた。
当時インターネットってよく分からなかったし、パソコン以外にも何か機器がいると思って長らく放置していたけど、付属しているケーブルを電話回線に差し込むだけで使えることが分かり、さっそくやってみた。

よく分からないけど、検索窓が出てくる。
ここに何か言葉を入れるらしい。
すると、それに対する情報がズラリと出てくる。
私は一瞬でその世界に吸い込まれた。

「情報」がいっぱいある。
それまで情報なんて、テレビか雑誌か、本屋さんか図書館に行って…とにかくお金を出して、足を棒にして探し回らないと手に入らないものだった。
一切の人付き合いを断っていたから、人づてに入る情報というのもない。

しかもこのインターネットの「情報」は、お金を出して手に入れるそれとはちょっと違うように思えた。
多くが、素人の書いたものだ。
素人の考え、経験、何気ない日常、あるいは、匿名だから吐き出せる共感できる感情。
でも、これこそが私がずっと求めていたもの…!
そう思った。

ここでなら、探せば、自分と近い経験をして、答えにたどり着いた人に出会えるかもしれない…!

当時もう、八方塞がりだった。ただモヤモヤするばかりで、自分で自分の考えていることがまるで分からない。
心の奥底では叫び声が上がっていた。

当時まだブログというのも一般的じゃなくて、ネットで意見発信する人はごく一部の人達だったと思うけど、それでも、せまい箱の中で窒息しそうだった毎日に大きな空気穴が開いたような、そんな気持ちになった。

ちなみにその月の電話代の請求金額は3万円になっていた。
一時期、ネット中毒状態にもなった。
ネットによって引きこもりが加速したとも言えるけど、ネットによって革命が起きたとも言える。
ネットがなかったら、自分はその後どうなっていたか分からない。