そんな風に受験に対して密かな野心を燃やしていた一方で、心境の変化もあった。
勉強に関してはもちろん今までどおり力を入れるけど、”勉強だけ”の自分にもなりたくない、と。
といっても特に勉強以外にしたいことがあったわけではなく、ただ、「ガリ勉」とか、「勉強しか興味ない」自分を、ひどくカッコ悪く感じていたのだ。
入学式の日の帰り道、私のすぐ後ろの席だった子が、声をかけてくれた。
声をかけてくれたことはすごく嬉しかったけど、派手な感じの見た目から、正直「ちょっと怖そう…」と思った。
その後自然と、その声をかけてくれた後ろの席のY、隣の席のS、斜め後ろのT、そして私の4人でグループになった。
ビジュアル系バンドが好きで、本人も歌が得意でドラムを叩いたりもするY。
バンドのボーカルをしている年上の彼氏がいて、とても都会的な印象のS。
クールでいつも一歩引いた感があったT。
みんないい人たちだった。
でもあの時の私には、彼女たちが異世界の住人のように思えた。
自分が完全に場違いな人間に思えた。
私は地味でダサくて、オシャレや恋愛など同世代の子が興味を持つことにもまるで疎く、まったく会話についていけない。
今思えば、例えそんな自分を正直に出したとしても、彼女たちがそれで私をバカにしたりのけ者にしたりするようなことはなかったと思う。でも私は必死に「そんな自分」がバレないようにと、無理に自分を偽って接しようとした。Yに声をかけられた時から反射的にそれは始まっていた。
YとSは、音楽、歌うことが好きという共通の趣味があり、話題はアーティストの誰がいいとか、どの曲が今好きとか、そういうことが多かった。
放課後遊ぶとしたら、行き先はもっぱらカラオケだった。
私は高校に入学するまで一度もカラオケボックスというものに行ったことがなく、でもそれを言えなくて、行き慣れているような口ぶりで会話に入ったりした。
カラオケに行ったことがないなんて知れたらこの人達にはきっとバカにされる、相手にされなくなる、そう思い込んでいた。
初めて4人でカラオケに行った時は、勝手が分からず内心ビクビクだった。
どうやって曲を入力して、どんな風に過ごせばいいの??って。
カラオケ自体は、前から行ってみたい場所ではあった。
ぎこちない手でマイクを握り、数少ない、たまたま知っていた曲を歌ったら、「上手いじゃん」と言ってもらえた。
歌うことは私も好きだった。好きな歌手もいた。ピアノをやっていたり中学では合唱部に入っていたりと、歌うこと自体に抵抗はなかった。
それ以後、私はカラオケにすっかりハマってしまった(笑)。
最初の頃は、流行りの歌を知らない、歌える曲のレパートリーが少ないことも、内心ヒヤヒヤものだった。
そのことが彼女たちの仲間入りをする上で”あってはならないこと”ぐらいに感じていた。
音楽番組を積極的に見るようにしたり、コンビニの有線で流行りのJPOPが流れてくれば、それすら覚えるために耳を傾けようとした。