家の中では甘やかされ、面倒なこと、大変なことは何でも母がやってくれた。
もうとにかく何でも上げ膳据え膳、手取り足取り、何にも自分ですることがなかった。
というより、させてもらえなかった。
私がトイレに一人で入れるようになったのは小学校に上がってからだし、ようやくお風呂に一人で入るようになったのは小学校5年生の時だった。
幼稚園の年長になっても自分でコップにジュースを注ぐということができなかったし、6歳になっても食事の時は必ず乳幼児用の前掛けを身につけさせられていた。
トイレは、当時住んでいた市営住宅の便座が小さい子供には大きすぎて穴にお尻が落ちてしまうとか、そんな理由だったと思う。
とにかくいつも母が私を抱きかかえて便座に乗せ、終わるまで目の前で待っていた。小学校に上がり、新しい家に引っ越すまでそれは続いた。
コップに飲み物を注ぐのは、私が1歳だか2歳の時に自分でやろうとしてコップを落として割ってしまい、足の指を数針縫う怪我をしたらしい(本人に記憶なし)。それ以来、自分で勝手にやってはいけないことになった。
前掛けは、私はすぐこぼすから、汚すから、という理由で。
母はテーブルや床に食べかすや汁がこぼれる飛ぶといったことをものすごく嫌がり、作る時、運ぶ時、食べる時、常に神経をとがらせていた。
うっかりこぼしてしまえば雷が落ちた。
食べカスがポロポロ落ちそうなお菓子を食べれば、母はどこにいてもすっ飛んできて、強引にお腹とテーブルをくっつけさせた。更にテーブルにティッシュペーパーやチラシを敷き、母が監視する横で食べていた。
子供が汚したものは子供に自分で後始末をさせればいい。そうすれば自分でも気をつけるようになるだろうし。
でも母は何でも自分でやらないと気がすまなかった。
人にやらせても、後で自分で拭き直した。
「自分でする」と言えば、「アンタなんかちゃんと拭けないでしょ!」と言われ、触るんじゃない!あっち行ってなさい!と払いのけられる。
そうやって何でも自分で囲い込んで、それで疲れてイライラしていた。