サポステに行く

面談当日、約束の時間より30分以上早く到着できるよう余裕を持って電車に乗ったはずなのに、

なんとさっそくやらかした。
遅刻した。

素直に案内通りの経路で行けばよかったのに、Googleマップでいい加減な調べ方をして、「あそこのすぐ近くのはず」と思い込みで動いてしまった。また地下鉄で行けるところを歩いたりしてしまった。
私のいい加減な下調べによると、サポステは某大型ファッションビルのすぐ近くにあるはずだった。

しかし、いくら探してもない。

その大型ファッションビルの周りをぐるぐるしているうちに、どんどん約束の時間は近づいてきた。
落ち着け落ち着けと言い聞かせて、コンビニで道を聞いたり、スマホでグーグルマップを見たりするうちに、どうやら自分が目指す場所はここから地下鉄一駅近い距離があることが分かった。

軽くパニックになりながら、コンビニの店員さんに教えてもらった道を必死にたどって、なんとか10分遅れでサポステにたどりついた。

出だしから自分のダメさ加減に落ち込んだ。

遅刻したことで「これだから長年引きこもっていた人間は・・・」 と思われやしないか、そんなことばかり気にしていた。

サポステに入ると、入口付近の休憩所では、まだ中学生か高校生くらいに見える少年が、周囲への関心を閉ざすように携帯を見入ったり(たぶんゲーム?)、食事をしたりしていた。
ニート、引きこもりというより、不登校の中高生といった感じ。

それを見て、やっぱりこんな若い子しかいないのかな・・・と不安になった。

引きこもりは高齢化しているというし、もっとそういう・・・中年に差し掛かったような人が年老いた親に連れられて相談に来ているとか、そういう人達が集団で社会復帰のプログラムを受けているという光景を勝手に想像していた。

私は「仕事をしたい」という意思が明確だったので、参加したプログラムが違ったのかもしれないけど、私が受けたプログラムでは、”一見すると”ではあるけど、25歳以下と思えるような若い人しかいなかった。

受付で認証カードのようなものを作ってもらい、その後すぐ別室に通された。
すぐに相談員の女性の方が来てくれた。

まず挨拶をして、それからアンケート用紙に、名前や住所、生年月日、最終学歴、家族構成、サポステで達成したい最終目標などを記入した。

その後これまでの経緯などの話に入っていった。

私は高校卒業してから36歳になる年まで、ずーっと家の中にこもり続けたという、まぁ、ある意味ものすごい経験を持つ人間だけど、一見すると、そうは見えないらしい。

メイクもちゃんとして、服装も小奇麗に見えるよう研究し、3年ほど前にダイエットもして10キロ痩せて、ここ3年間で外見的には何とかまともなレベルに仕上げた。

また、話すときもなるべく相手の目を見るようにし、失礼のないよう努めている。
なるべく「感じのいい人」に見えるよう心がける。

30半ば相応の話し方、振る舞いというものを、テレビなどから会得したつもりになっていた。

実際には、私は対人関係、コミュニケーション能力に問題がありすぎる。本当にありすぎる。
働くことで人と接したり、ちょっと付き合いが長くなるとすぐに化けの皮が剥がれる。

しかし、その場限りの相手、短い時間であれば、”そこそこフツウの人物”を装うことができてしまう。
無意識に、引きこもりであったことをバレたくない、人には「問題のない、並の経歴の持ち主」に見られたいという心理が働くのだ。

相談員の方の前でも、割とうまく話せたと思う。
うまくと言うか、ものすごい内容を何てことない世間話風にサラッと話してしまった。
「いや~、16年引きこもってたんですよね~」という感じで。

こういう場所でくらい、ありのままというか、カッコつけないで、そのまんまの自分を出してしまって、深刻な部分も受け止めてもらいたかったけど、できなかった。

相談員の方にはどこまで見抜かれていたかは分からない。
しかし、
「うん、会話も普通にできるし、人の目を見れないってこともないし。
大丈夫そうね。エクセルとかできる?事務とかもできるんじゃない?」と言われ、驚いた。

事務なんて、さすがにないでしょ・・・と。エクセルなんてお遊び程度しかやったことないし。

でもそれを聞いて、ちょっと希望を持ってしまった。
意外と、こんな状況の人間でも仕事ってあるものなの??と。

まぁ「事務」なんて言葉はそこから一切出なくなり、「清掃とかできる?」って話になって、一瞬「清掃・・・?」と思ったけど、すぐいい子ぶってしまう癖がある私は、「はい、できます!」と元気に答えてしまった。

選べる立場にないし、あるだけありがたいと思っていたのも本当だ。
実際、その後紹介してもらって今就いているのは清掃の仕事で、ビジネスホテルのベッドメイキングだ。
でもこれも、サポステを通して見つけなければ、いきなり求人誌で応募しても受からなかったと思う。

その後、「問題なし」と仕分けされてしまった私は、いくつかのプログラムの参加を勧められ、それに参加することになったのだが・・・。