メイクのこと

ファッションも途方に暮れるほど分からなかったけど、メイクも「超ド級」の下手くそだった。
よくあそこまでポイントを外せるなと思うくらい、何もかも見当違いのことをしていた。
何ひとつ、どれだけ練習しても、満足に外にしていける仕上がりにはならなかった。

化粧品は、一つの物(ファンデーションとかチークとか口紅とか)の値段は服に比べそう高くない。
服と違ってそう幾つもいるものでもない。
これなら私にもできると思った。

例えばマスカラ。ビューラーでまつ毛を上げてマスカラを塗る、化粧の基本中の基本だ。
マスカラでまつ毛を強調しただけで顔の印象はだいぶ変わる。それだけでだいぶ「メイクした感」が出る。

その割にあまりコストはかからない。
ビューラーは高くても1個1000円くらいだし(もっと安いのもある)、
消耗品ではないので1回買ってしまえばそれ以降の出費はない。
マスカラも1000円前後でいいものが手に入る。

放物線を描いた美しい上向きまつ毛、
これに私は大変憧れた。

難しそうに見えたけど、雑誌でもしょっちゅう特集が組まれていたし、街でもそこら辺の女の子が普通にしている。
これなら私も・・・!と思った。

・・・なのに、何度練習してもひどい出来になってしまう。
まつ毛がカクっと折れ、しかもその折れ方が右に折れたり左に折れたり、縮れたり、なぜか頑固に下を向くまつ毛があったりと、ぐちゃぐちゃに交差する。
こんなのとても外にはしていけない・・・。

なんでだろう?今もって分からない。
根本から上げることにこだわりすぎ、力を入れすぎていたことは確かだと思うけど。

でも軽くやったら、全然上がらなくて。
こんなんじゃイヤ!!もっともっと上げたい!!

もう笑えるほど失敗するんだけど、
そのたびに「何がいけなかったのか」を真剣に考えるのだ。

「いけなかったこと」がないと困るのだ。
何も悪くないのに失敗するようじゃ、もうお手上げってことでしょ?
それは絶望だ。

自分なりに直しどころを必死に考えた。
じゃ次はこうしてみよう、ああしてみようとか。
ミリ単位での修正。挟み方、挟む位置、手首の返し方など。
夜通しそんなことやるのだ。もう万策尽きた…となるまで。

ふと我に返って、バカらしくなる。
よく考えれば、そんなの関係あるか!って。
そんなミリ単位の狂いが仕上がりに影響するほど神経使う作業を、世の女子は毎朝やっているのか?と。

なんかもう、これ以上いくらやっても、私のまつ毛は必ず折れ曲がり、交差し、毎回1本は黒目の方向に突き刺さるように下を向く、”そういう風にできている”気さえしてきた。

それでも諦めきれないのだ。
誰でもできてると思うと、あきらめきれない。
お金がかからない、「練習」で何とかなるものだと思うと、あきらめられない。

手鏡片手に、夜通しビューラーと格闘する。
そんなことを繰り返した。

正直今でも分からない。なんであんなに上手くいかなかったのか。

今は普通にまつ毛をカールできるけど、あの頃と今とで何が違うのか、今でも分からないのだ。
あの当時やっていた感覚を思い出して、あえて「やってはいけない」的なことをやってみても(力入れすぎてみるとか)、普通に成功するし。

ただ、確かに私のメイクの失敗は、塗りすぎ、力入れすぎなど、「やり過ぎ」によるものが多かったと思う。
メイクがうまくいく時は、感覚的には「え?こんなもんでよかったの?」と拍子抜けするほど、あっさり終えたものが多い。