薬で落ち込む

仕事や対人関係で自分に絶望し、自分は何らかの障害ではないか?と思い始め、藁をもすがる思いで医療機関に助けを求めた時は、診断がつけばきっと何かが大きく前進し、心が晴れわたると思っていた。

でも、そうではなかった。
当たり前かもしれないけど、診断されたこと、ただそれだけで何かが大きく変わることはなかった。
相変わらず、怒られ、嫌われ、嫌味を言われる日々。
診断されたからと言って、その落ち込みが軽減されるわけではなく、むしろ落ち込みはどんどんひどくなっていった。

診断を受けたその日、「コンサータっていう薬を飲んでみない?」と言われ、試してみることにした。

さっそく次の日から飲んでみた。まずは18mgから。

コンサータの効果なんだろうか?
飲んでから、明らかに仕事が早くなった。

私は仕事が遅い。仕事に限らず何事も人より時間がかかってしまう。
手先が不器用でちょっとした作業でもモタつきがち。トロい。急げない。体が思うように動いてくれない。どうでもいいことが見逃せなくて時間をかけすぎてしまう。不安で何度も確認してしまう。「まだ終わってないの!?」ってよく言われる。

私の仕事はホテルのベッドメイクで、だいたいみんな同じ部屋の数をこなすのだけど、私はみんなが終わる頃になってもまだ部屋を1つか2つ残していることが多かった。
だいぶ長く甘くみてもらってたけど、3年目になった辺りからキツく怒られるようになってきた。
しかし何回怒られても、自分なりにもうがむしゃらに、これ以上ないってくらい必死になって急いでも、動きのムダを洗い出して徹底して省くようにしてみても、それでもみんなに追いつくのが難しかった。
急げば今度は抜けやミスが出た(掃除し忘れ箇所があったりアメニティの数間違えたり)。

それが、コンサータを飲んだ日から、初めてみんなが終わる時間に全部屋を終えることができたのだ。

ただ、無理せず急げるようになったというより、”むちゃくちゃな急ぎ方”が苦ではなくなった感じ。
身体(手先)のモタつきやトロさを力技?でカバーしようとしてしまう感じ。
水を飲む間も惜しいほど脇目も振らずベッド作って棚拭いて洗い物して洗面所拭いてアメニティ補充して浴室洗って拭き上げてトイレ掃除して床拭きして掃除機がけしてを20分で×7~8部屋して…。
それでやっとみんなに追いつくようになった。

家でもなかなか手を付けられなかった家事をこなせるようになった。これらはやはりコンサータの効果なんだろうか。

ただ、私が困っている不注意や、とにかく忘れっぽい、うっかりが激しい、衝動的に動いてしまうといった自分は、コンサータを飲んでも特に変化はなかった。

次の診察で、一番困っていた不注意や忘れっぽさには効果がなかった不満を強く述べてしまったためか、コンサータの量を増やしてみようということになり、いきなり36mgになった。

しかし量を増やしてもやはり不注意や忘れっぽさに変化はなかった。

それに加え、新たな問題が出てきた。
コンサータを飲むと、とにかく気分が落ち込む。ズドンと落ち込む。
それまでなら気にしないでいられたような(そこまで引きずらなかった)些細なことで、家に帰ってから落ち込みで何も手につかないようになってしまった。

車の運転中、赤信号が青に変わったのにボーッとしていて気づかず、後ろの車からプッと軽くクラクション鳴らされただけでショックで家に帰って寝込んでしまった。そして夜遅くになったあたり(おそらくコンサータの効き目が切れた時)から気分が回復しだす。
コンサータは薬が効くときと切れるときがはっきり分かるらしいので、「あ、これ明らかにコンサータの作用だな」と思った。

コンサータを飲んでいた1ヶ月間は毎日がこんな感じですごくキツかった。

医師に理由を話し、「コンサータはもう飲みたくない」と告げると、予想していたストラテラに変更になった。
幸いストラテラも飲むとやはり身体がキビキビ動くのと、コンサータのような落ち込みやその他副作用も特になく、仕事には欠かせなくなっている。

部屋を早く終わらせられるようになっても、少しずつミスを減らしていって周りに追いついていっても、リーダーIさんの冷たい態度は何も変わらなかった。それも落ち込みの一因だった。

部屋を早く終わらせるのは「当たり前のこと」で、褒められるようなことではないのは分かってる。
でも、私が嫌われるのは「仕事ができないから」であり、仕事が(人並みにでも)できるようになれば、頑張りをちょっとでも認めてもらえれば、私もみんなと同じような穏やかな態度を取ってもらえる、そう期待していた。

でもむしろ、私が指摘されたことを一つ一つクリアしていけばいくほど、Iさんの態度はキツくなるように感じた。
他の人は怒られないことでも、私だけは怒られる。
濡れ衣を着せられ、誤解と分かっても「ごめんね」の一言もない。

春に診断を受けてから、秋までに色々と…本当に色々なことがあって、私はもう心も体も限界と感じていた。